サポートに精通した責任者がいないことによる問題の実例――グルーポンおせち騒動を題材に

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昨年末にこのような記事がASCII.jpに掲載されました。

共同購入のグルーポン、圧倒的強さの秘密をCTOが語る

この記事の中で取材を受けたCTOは1時間弱で入社が決まったそうです。一方でグルーポンはバードカフェのおせち騒動で1月1日に対応策を発表、返金方法やスケジュールに関しては1月5日まで先送りしました。

雇用は1時間もかからずに決定できるにもかかわらず、顧客サポートは実質的に1月5日まで放置とあまりにもバランスを欠いています。また、返金と5000円相当のお詫びのみという対応は、消費者心理を判っていない頭だけで考えられた内容だといわざるを得ません。

何が問題なのか。
まず、12月31日に苦情が届き始めたにもかかわらず、翌日の昼過ぎまで謝罪文が公表されなかったことです。これがレストランの食事券などであればこのスピード感は賞賛されますが、今回の問題はおせちであるということです。おせちに対する日本人の気持ちや思い入れを理解していれば正月の昼過ぎまで何も発表しないというのはありえない話です。1月1日13時発表の内容くらいは12月31日中に出すべきでしょう。また、グルーポン社は少なくともメールアドレスを把握しているわけですから購入者に対してメールで謝罪を入れる必要があります。今回のケースでは時間勝負なところもあるので、もし電話番号を把握しているのであれば電話でも事情説明を入れるべきだったでしょう。

次に5000円相当のお詫びという問題です。今回のようなケースで消費者が思うことは「なぜこんな商品を売る会社にクーポン発行を許したのか」「クーポン発行会社に対する審査体制はどうなっているのか」の2点が最大です。購入代金の返金はもちろんですが、一番求められている情報はそこです。消費者側は「グルーポンに掲載されている会社だから大丈夫」という一種の安心感を持ってクーポンを購入しているわけです。それを裏切った点についてはいまだに「バードカフェ(横浜)「謹製おせち」についてのお詫びとご報告」の内容しかありません。今後再発しないのは当たり前のことで、なぜこうなったのか、という点がきちんと報告されないと「CEOアンドリュー・メイソン:「謹製おせち」お詫び」に書かれている
* クーポン商品の提供会社に対する事前審査を厳格化いたします。
* クーポンの上限枚数の明確な考え方を導入します。
* クーポンご購入者様からの専用お問い合わせ窓口を設置いたします。
* お客様、加盟店舗様に一層安心して弊社サイト「GROUPON」をご利用頂けるよう、社内教育の更なる拡充並びに業務管理体制の強化を図ってまいります。
という声明を見ても安心できないのです。サポートエンジニアである私から見ると「上限枚数の基準が設けられていなかった」「購入者専用問い合わせ窓口がなかった」という時点であまりにもサポートというものを軽視したありえない事態なのですが……。

さらにCEOの声明が日本の消費者の心情を逆なでしているのも問題です。「CEOアンドリュー・メイソン:「謹製おせち」お詫び」にこう書かれています。

グルーポンは未知の領域を開拓しているビジネスです。ご近所、地元の商業をインターネットの世界につれてくる前線にいると考えております。まだ地ならしされてない道であり多くの障害もあり、今までも失敗をし、これからもそうかもしれません。

消費者側がこういって慰めるのならばともかく、自分たちから「今後も失敗するけど許してください」とは絶対にいってはならないコメントです。ここにもきちんとしたサポート責任者がいない弱さが出ています。

このBLOGでは以前よりIT企業におけるサポートに対する考えの甘さを指摘してきました。結局、今回の問題もサポートを軽視したつけが出ているのです。お客様は神様ではないので時にはその要望を切り捨てる必要もあります。そうしたことも含めて、CTOやCFOなどと同じようにCSO(Chief Support Officer)を設けて、今回のような問題が発生しても機動的かつ適切に動けるよう、組織を構築していく必要があるのです。IT企業にいま最も求められている組織はCSOが統括する総合的なサポート組織です。